時空の森と悪戯な風
智治は悲しげな表情で、アタシを見ていた。
『弥生…待っててって言ったのに…』
「智治…?」
光の色がだんだん赤みがかると、突然それは立ち上る炎に変わった。
「智治!逃げてーッ!!」
助けなきゃ!
今度こそ助けなきゃ!
炎に向かって走り出す。
『弥生、どこ行くんだよ!』
圭介がアタシの腕を掴んだ。
「放して!あそこに智治が!火がッ!」
泣きながら、悲鳴に近いような声で叫ぶと、それを打ち消すくらいの声の大きさで圭介が怒鳴った。
『しっかりしろ弥生!!アイツは、もう死んだ男なんだぞ!』
「違う、違うッ!イヤーッ!!」
叫びながら、ガバッと起き上がった。