時空の森と悪戯な風
その ー 光 ー

噂の森の駐車場にはアタシしかいなかった。



早く行かなきゃ!
森の中へ走っていった。



急がなきゃという気持ちが、アタシを後押しさせ、前よりも早く大木に着いた。



大木を見上げ、呼吸を整え、智治と会いたいと願いながら目を閉じる。



ここで、あの風が吹かなければ、智治に会えない。



大木に背中をあて、手を組み、ひたすら祈っているのに、風が吹いてこない。
まるで無風状態。



「どうして?!」



大木に問い掛けても返事がある訳じゃない。



何度も繰り返したけど、待つ風は吹かなかった。



肩を落とし、トボトボその場から離れていった。



するとフワッと風が吹いた。



「風が出てきた」



急いで戻り、また智治に会えるよう、大木に背中をあてて祈ったけど、やっぱり風は吹かなかった。



「会わせてくれないの?智治はアタシに会ってくれないの?!」



静まり返る森…
諦めて大木を後にした。





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