時空の森と悪戯な風
確かに目の前に智治が立っている。
「アタシ…アタシ…」
涙が出てきた。
会えて嬉しいけど、謝らなくちゃならない。
「智治…ごめんなさい」
『弥生、分かってるよ』
「葬儀にも行かなくて…でも信じられなくて…今でもまだ…」
しゃくりあげながら智治に話した。
『弥生、今こうしているのも、まだ信じられないでしょ?』
黙ったまま少し頷いた。
『明日、来て欲しい所があるんだ…天の橋墓園に大きな桜の木があって、そこの左の奥に俺がいるから…』
その墓園は、アタシの家と智治の家の中間にあり、海を見下ろす丘の上にある。
そして偶然にも、父のお墓も、そこの墓園にあった。
「分かった。絶対に行くよ」
涙をふきながら応えた。
智治が頷いた後『それと…』と付け足して言った。
『弥生…その時は…あの人と来て欲しいんだ』