時空の森と悪戯な風
「あの人って?」
『付き合ってる人だよ』
胸がズキッと痛んだ。
そんなアタシの気持ちを見透かしたのか
『何も悪く思わなくてもいいんだよ』
と智治が言った。
どう答えたらいいのか分からなかった。
“ありがとう”でも
“ごめんなさい”でもないからだ。
『もう時間だ…弥生、明日待ってるから』
そう言い残すと、下からフワッと巻き上がる風と共に、智治を包んだ光が大木の先端まで昇って消えてしまった。