時空の森と悪戯な風
ああ…そうか…
だからアタシは死ねなかったんだ。
「会ったら言ってくれ。
じゃ、また病院に戻るから。
弥生が目を覚ました時には、側にいてやりたいんだ」
『ああ…』
智治がアタシの側に戻ってきた。
そして、二人で圭介が森を去って行く所を、ずっと見送っていた。
『弥生、彼の姿…ちゃんと見たか?』
“うん”と頷いた。
『あれだけ、お前の事を愛してるんだよ』
アタシは「うん」しか言えなかった。
『後を追って死ぬ事が“愛の証明”じゃない。
最後まで生き抜く事が大事なんだ。
弥生、ちゃんと生き抜いてくれ!
次に会う時は、人生を全うしてからだ』
智治に涙はなかった。
智治は、まるでアタシに“想い”を送るかのように、強く強く抱き締めた。