時空の森と悪戯な風

『仮の形だけど弥生と、こうして会えたのは…俺の強い願いもあったからなんだよ』



会いたい、触れたい、抱き締めたい。



同じ気持ちだったんだね。



あの頃の二人は、とてもピュアな恋愛だった。



大人になってからの恋のように、駆け引きなんて無かった。



綺麗なままの、キラキラした二人…



あの頃の思い出を、アタシの間違った行動で、汚しちゃいけない…





智治は、アタシの口から言うのを待っていた。



“戻るね”という言葉を…



手を繋いで、また、さっきのベンチに座る。



横には森から帰ってきた圭介が、ベッドに寝てるアタシに話しかけているところが、映し出されていた。



「弥生、さっき森に行って彼と話してきたよ。今頃、弥生も彼に会ってるのか?」



うん、隣にいるよ。

圭介が来た事も知ってるよ。



「弥生、今…幸せか?」



ズキッと胸が痛くなった。



「彼に会えて幸せか?」



アタシと智治は、黙って圭介の言葉を聞いていた。



「俺は彼に誓ったんだ。弥生を幸せにすると。本当は彼がしたかった事を、彼の分まで幸せにすると…」



そうなの?

智治の方を向くと、彼は黙って頷いた。



「だから…だから戻ってきてくれよ…」



アタシの手を握りながら...

アタシを見つめながら、圭介は大粒の涙を溢していた。





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