時空の森と悪戯な風

海を見ながら、圭介は話を続けた。



「意識が戻っても、弥生の顔には“今すぐ死にたい”って書いてるようだった。

お前の辛い顔は見たくなかった。

お前を楽にしてやりたかった。

でも…あんな事してしまって…許されるものじゃない…」



アタシは首を横に振った。



「謝らなくてもいいの。

終わった事なのよ…

今こうしてアタシは元気でしょ?

だから…謝らないで、圭介」



静かに打ち寄せる波を見ながら、アタシは圭介の手をそっと握った。





時空の森が、圭介に巻き起こした時間



アタシを引き戻した時間



そして、やっと動き出した二人の時間





もう、振り返る事はない。



ゆっくり前に進んでいこう。



時間に身を任せながら。






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