光と影
小学5年。
私は大好きなおばあちゃんの
お金を盗んだ。
ただ単純に、
お金が欲しかっただけ。
友達と遊びに行く
お金が欲しかっただけ。
1回だけじゃない。
ばあちゃんんちに遊びに行くたび、
何度も、何度も。
ばあちゃんは私を怒らなかった。
「ごめんね」
そう言った私にうなずくだけだった。
ばあちゃんはお母さんに電話した。
合わせる顔がなくて、
お母さんに会いたくなくて、
迎えにくるまで震えていた。
何度も死んじゃいたい気持ちで
いっぱいになった。
時間が経ち、お母さんがきた。
「ごめんね…
ママの育て方が悪かったんだよね」
そう言って泣いている母親。
こんな涙を流すお母さんは始めてだった。
どれもこれも私のせい。
私をつれて車を走らせ、
着いたのは人通りのない河川敷。
私は何も言えなかった。
ただただうつむいて、
早く時間が過ぎるのを待っていた。
「ばあちゃんがね、"怒らないでやってね"
って言ったんだよ。優しいね」
涙が溢れた。
自分は何てことしたんだろうって
ことの重大さにやっと気付いた。
「ママは信じてるからね」
まだまだ小さいながらにも、
この言葉が心にズシンときた。