光と影
切れない手首
「うるせぇなあ。黙れや!」
バタンッ
勢いよく部屋の戸を閉める。
お母さんとしょうもないことで
ケンカをする。
前までは気にしなかったことも
最近はすぐに苛ついてしまう。
これが思春期というものなのだろうか。
私は机から
折りたたみナイフを取り出し、
手首にあてる。
ナイフを引くのは恐いから、
思いっ切り手首に押し付けるだけ。
そんな行動が私の癖になっていた。
何か腹立つことがあれば
ナイフを持ち、
悲しいことがあれば
ナイフを持ち、
辛いときは泣きながら
傷を付けた。
どういう感情かはわからない。
だけど、"切りたい"
という衝動にかられた。