2人のゴール
★2★

数学の時間

【慎也side】

 俺の好きな数学の時間。
 数学はあんまり好きじゃねぇけど、咲月と話せるのは、数学の時間が多い。

 つまらない先生の話を聞く。
「じゃあ、この問題解いて」
 ……垂線?
 垂線を作図しろっていう問題。
 垂線って、どうやって書くの?
「おい、咲月。垂線ってどうやって書くの?」
 そしたら咲月は、「そんなのも分からないの?」みたいな顔をした。
 しょうがねぇじゃん。
 俺バカだし。咲月みたいに頭よくねぇもん。
「えっと……点Pから適当な長さで半円を書く」
 俺はその通りに書いた。
「こう?」
 咲月の顔を見る。
 悲しそうな顔はしていなかった。
「うん。そしたら、コンパスを少し広げて、交わったところを中心にして、この辺に印をつける」
 ……近い。
「その印が交わったところと、点Pを通るように線を引く」
「これでいいの?」
「そうそう」
 笑顔だった。

 もう、気にしてないのか?
 それなら、いいんだけど。
 
< 28 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop