２人のゴール
【慎也side】

　咲月が女子のみんなにチョコを配っている。
　男子には配っていないみたいだ。
　少しだけ、俺にくれるんじゃないかって思う自分がいる。

　そんなことねぇと思うけど。
　もし俺にくれたらいいのになって思う。

「石橋からもらえるといいな、チョコ」
　俺の肩に腕をのせながら言う佐久間。
　俺だって咲月のチョコ欲しいよ。
　自分からチョコくれなんて言えねぇよ。
「言えば、チョコ欲しいって、石橋に」
　言えたらすぐに言ってるよ。
　言えないからチョコもらってねぇんだろ。
　つーか、俺の分までチョコ用意してねぇだろ。

　授業が全て終わった。
　もしかしたら放課後、チョコくれるんじゃないかって、少し期待している自分がいる。
　
　でも咲月は、普通に部活へ行った。
「残念だったな、石橋からチョコもらえなくて」
　佐久間が咲月が教室から出ていくところを見ながら言う。
　残念だけど、咲月は俺のことが好きじゃないからしょうがない。
　期待していた自分がバカみたいだ。
　咲月からチョコもらえるわけねぇよな。
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