2人のゴール

「え、あ、あぁ」
 慎也は我に返ったみたいで、私の上からどいた。

 あれから、気まずくなって、会話が全くなかった。


――社交ダンス発表会当日。

「今日は頑張ろうね」
「あぁ」

 私と目も合わせてくれない。
 あのことまだ気にしてるのかな?
 それとも、嫌われちゃったのかな?

 いよいよ私たちの番。
 あの時みたいな失敗をしないように頑張ろっと。
 っていうか、あれは慎也が悪いんだけど……。

「失敗しないように頑張るから」
 この時、慎也は私の目を見て言ってくれた。
 それに、笑顔だった。
 私、嫌われてなかったんだ。よかった。

 踊っている途中、またあの時の失敗が起きてしまった。

 慎也は「ごめん」っていう顔をして私を見る。

「大丈夫だよ、慎也。続けよう?」
「あぁ」
 
 そしてまた踊り始めた。
< 56 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop