とある女の子の小さな恋の物語。
葵寮に帰ると、

「お帰りなさい。」

いつものおばさんが扉を開けた所で私に向かって言ってくれる。

私の日常生活で
私と話してくれる人は

おばさんくらいしかいない。

「ただいま。」

顔の筋肉がひきつりながら
私はおばさんに笑顔を返した。

笑顔。

私にとって無縁な物。

そう思ってられたのはこの時だけ、

そんな事実に私は気付くはずもなかった。

「めいちゃん、ご飯は7時からよ。」

閉じた、私の部屋ごしに聞こえた声。

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