わがまま、言わせてよ【ミュージシャンとの恋】
強いて口には出さなかったが、そのかわりに顔に思いきり出ていたと思う。
ヨシキから少し視線を下の方へずらすと、
あたしにげんこつの手を差し延べている。
「はいッ」
手とヨシキの顔を交互に見合わせた。
疑問だらけで、落ち着かなかったあたし。
…ヨシキは、そんなあたしに呆れてる。
「手ぇ出せよ〜」
あたしには何故呆れているかも分からない。
理解不能。
沈黙が走った中、ヨシキは無理矢理あたしの手を取り、差し延べていた手の下に持って行った。
「手、開いて」