うらばなし
妻「ええ、ですからいつもと同じようにあなたに接しますね!谷間に挟んで、と」
猫「猫だからすっぽり入るなーーって、ちげええよ!そんな扱い方も求めてないし、もうしかしたら、人間に戻れるかもしれねえんだ!」
妻「あら、そうなの」
猫「反応薄いな!俺が猫のままで良いのかよ!」
妻「あなたがあなたのままなら、それで構わないわ。あなた、ワタクシのこと好き?」
猫「そ、そんな、当たり前のこと、わ、わざわざ口出せるかっ」
妻「それでこそあなたよーっ!」
猫「いい加減降ろせ!俺はこの先にある温泉に入るんだーっ」
妻「その温泉で元に戻るのかしら?」
猫「分かんねえ。でも、犬の話じゃ」
妻「動物と話せるなんてーー心まで動物に染まっちゃダメよ、あなた!」
猫「ちがっ、喋れる犬だったんだよ、あれは!」
妻「何を言っているの、あなた。この世に喋れる動物なんて、いるわけがないじゃない」
猫「ぐっ、確かに」
妻「動物と人では、声帯の作りが違うのだから、動物が人間みたく話すだなんて無理に決まっているわ。非科学的よ」
猫「正論だな。まさかお前から正論聞かされるだなんて」
妻「疲れているのね、あなた。犬が話すだなんて言い出すほど。ここは温泉だし、ゆっくりと入りましょ。溺れないように、ワタクシが抱っこして入れてあげますから」
猫「ああ、そうしてくれると助かる。ほんと、人間疲れるとヤバいな。早く入りたいから、この先の温泉にしてくれ」
妻「あなたが言うなら、何なりと従うわー」
猫「喋れてんぞ、俺!?」
妻「あなたなら、許されるわ」