うらばなし
冬「こないなデカい竜とも友達なれるやなんて、姉さんのお人好しパワーは流石やねえ」
依「冬月くんそれ、誉めてるの?」
冬「優しさだけで世の中どうこうしよー言う姉さんのために、僕は後ろから支えますえ」
依「後ろ振り向いたら死体の山が出来ていたとかは、なしだからね!」
冬「姉さんに汚いもんは見せんさかい」
依「一番の危険人物はあなたよ、もー。大人しく旅館で泊まってーーあれ、冬月くんもあの旅館に泊まっていたの?」
冬「違いますわぁ。最初は僕にもお誘いあったらしいんやけど、兄さんが行っちゃダメだよ言うて、頭撫でるもんやから、家でゴロニャンしていたんどす。けど、大物妖怪出たぁとかで、兄さん行ってしまったんやわぁ」
依「ちょっとちょっと、また妖怪を殺すんじゃないでしょうね」
冬「それは兄さんの判断さかい。まあ、兄さんも姉さんの足元にも及ばないなりにお人好しな部分出てきたさかい、殺すのは最終手段と違ぅ?」
依「やっぱり私を馬鹿にしてるわね……」
冬「馬鹿やなんて、愛しているだけどすえ。わたるんはん目的で来たのに、まさか姉さんに会えるやなんて。これは、今日こそ結婚しろってことやね!」
依「単なる偶然ーーにしても、冬月くんは何でここに?わたるんはんって、渉くんって子のことよね。彼も秘湯探しに来ているのかしら?」
冬「違いますわぁ。わたるんはんは、あの旅館の露天風呂に入っている最中さかい。見ますぅ?」
依「高そうな望遠鏡ねえ。えっと、ここから見ればーーって、覗きじゃない!」
ド「……!」ノリツッコミダ
依「ちょっと冬月くん、何してるの!こんなことする子とは思わなかったわ!」
冬「覗きやなんて、僕はわたるんはんを見ているだけどすえ」
依「こーんな遠い山から望遠鏡まで用意して見ていたら、覗きじゃない!」
冬「僕だって、今すぐにでもわたるんはんと一緒にお風呂入ったり、背中の流しっこしたり、お風呂ならではのハプニングしたいんやけど。に、兄さんがーー『行ってもええけど、旅館に入るの禁止どすえ。やないと、帰って来てからのナデナデはお預けどすえ』って言うんや!死の宣告されたら、守らなあかん!けれども、わたるんはんに会いたい会いたい会いたいっ。なのに、会ったら兄さんにナデナデしてもらえない!だから、こうするしかなかったんだ!」
依「握り拳で力説されても、話が極端すぎるよ!」
冬「姉さーん。兄さんはたまに僕をいじめるんやぁ。姉さんやわたるんはんに会うの禁止してみたりーー僕を独占したいのは分かる。僕も兄さんに独占されるなら、手錠持参で兄さんの胸元に飛びつくけど、肝心の兄さんもおらへん。一人っきりや、僕。寂しいわぁ、虚しいわぁ。ーーでも、兄さんは僕に会う度にいっぱい甘えさせてくれるから、イジワルされても許せるんやわぁ。兄さんのやることなら何でも許しちゃうし、兄さんの言うことなら何でもしちゃう。
だから僕、きちんと旅館に入らず、かつ、わたるんはんが温泉入って誰かに襲われんか見続けていられるええ子なんどすえ!
ああぁ、わたるんはん。やっぱり、そこについているホクロがチャーミングやねぇ」