うらばなし

紫暮の場合。

紫「雛、スマフォ鳴っているけど」

雛「あ、はいっ。あれ?」

紫「知らない番号だね。雛、知らない男にまた番号でも教えたのか」

雛「だ、誰でしょう!」

紫「……」

雛「え、ええと、紅葉ちゃんは番号変えてないし、他の人も確かーーと、とりあえず、出てみますね!」

紫「俺が出るよ」

雛「ほ、ほんとですかっ。お願いします!」

紫「雛の浮気を疑う日はなさそうだ。さてーーもしもし」

雛「……」(へ、変な人じゃないよね。あっ、この前の壺の人!?)

紫「いえ、俺は彼女とお付き合いさせて頂いているものでして。はい、分かりました、伝えておきます。いえ、そういったものは、遠慮させて頂きます。彼女も善意でやっただけですので。はい、では」

雛「……、ど、どなた様でしたかっ」

紫「財布落とした人。あの時は、二時間も一緒に探してもらってすみません。結局、家にありました。だって」

雛「ああっ!あの時のサラリーマン!帰ったら妻に怒られるって、泣いていたので、つい!もうしかしたら、私が見つけるかもしれないって、連絡先交換したんでしたっ!」

紫「雛、余計な話しかもしれないけど、そういった手助けは形(さわり)程度で、二時間も使うことはない。結局のところ、家にあっただなんて、無駄なーー」

雛「良かったー!妻と娘で映画に行くチケットも入っていたと話していましたから!あ、今頃は家族水入らずで楽しんでますかねっ!」

紫「……。周りに優しくするのを疎むべきなのに、そんな雛じゃなきゃ、今こうして、俺とも出会えて無い、か」

雛「はい?何の話ですか?」

紫「難しい話だよ」

雛「紫暮さんが、分かんないなら、私にも分からない難しい話ですねっ」

紫「だね」

雛「なら、二人で解きましょう!三人寄れば文殊の知恵ですから。あれ、一人足りないっ。も、紅葉ちゃーん!」

紫「そんな雛が愛しいよ」

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