うらばなし
日が36時間あったならば

ーー

ワタシは、世界平和を願っていた。

だからこそ、『世界を守る役目』と謡われた魔法使いの肩書きを担うことに、何ら迷いもなかった。

しかして、理想と現実は釣り合わない。


確かに魔法使いというのは、世界を守る為にある。世界を滅ぼさんとする外敵の駆逐ーーもっとも、書庫(一番)は愛狂いで“あの輩”のために行い、拝神(二番)に至っては気まぐれであり、本当に世界のために動くと言うのは、ワタシや救済(五番)ぐらいのものだろう。

このことを鑑みても、魔法使いの肩書きは、肩書き(それでしかない)とのことは明白である。

「言うならば、私たちは奴のテリトリーに入ってきた者を始末する番犬なのだろう」

救済は言う。
ワタシへの皮肉も込めて、言う。

断っておくが、救済に悪意はない。
ただ彼女は率直なのだ。

歯に衣着せぬほど、確信に触れてくる。

『お前は、このままで良いのか?』

逆に問いた。不服はないのかと、ワタシも率直に。

「ないよ。私には、これしか出来ない。私は、聖人君子のなり損ないだ。他を殺し、身内を救う。目に入った者、手の届く場所にいる者しか救えない偽善者だ。ーーでも、それでも、そいつを救えた事実は違いない。

目に見えるからこそ、そいつの笑顔を見。手の届く場所だからこそ、触れ合える。私はそれで満足だ。

『世界そのもの』を守りたいお前の深さに、私は至らないよ」

証明するかのように、救済は、ワタシの頭に触れてくる。

彼女はワタシも救おうとしているとは、何年か後に分かった。ふと思い出し、ああ、あれはそういった考えがあったのかと思い出に花が添えられた。

「『世界平和』の夢を持つ人は、『人類が争わない世界』と答える。もしくは、『みんな笑顔でいられる世界』か。何にせよ、『世界平和』(そこ)にはーーその絵には、『人類』が必ずいる」

ワタシの“絵”にはーー

「私(人類)はいないだろう?」


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