うらばなし
ーー
雛「ふう、雨ひどかったー」
紫暮「あれ、早かったね雛。今日は夕方まで大学にいると思っていた」
雛「えっと、紅葉ちゃんと出席するはずだったんですが、その紅葉ちゃんが急用出来たとかで」
紫「そう。電話すれば俺が迎えに行ったのに」
雛「そ、そそ、そんなっ!紫暮さんにそこまで迷惑はーーって、なんで私の部屋にいるんですか!?」
紫「合い鍵くれたのは、雛だろう?」
雛「あ、そうですね」
(そ、そっか。鍵渡したんだから、紫暮さんがごくごく自然な感じで私の部屋にいて、エプロンつけて料理していても普通、だよね)
紫「雛、今温かい物でも入れるから着替えてきなよ」
雛「あ、ああ、あのっ、着替えますから、こ、こっち向かないで下さいねっ。わ、ワンルームですから、紫暮さんのところみたくないですからっ」
紫「雛が着替えるのはどうしても目が行っちゃうから、脱衣場で着替えた方がいいよ。ついでに、シャワーも」(クスクス)
雛「っっー!」(は、恥ずかしいっ!そんな簡単なことあるのに、変に意識しちゃって!うわわ、変な人と思われた笑われたっ!と、とりあえず着替えを)
「ニァニァ」
雛「!!」(ビクウゥ)
紫「……、雛」
雛「に、ニァニァ」
紫「俺が雛の声の判別つかないと思っているの?」
雛「ご、ごめんなさい」
紫「大方予想つくけど。捨て猫でも拾ったか」
雛「はい、濡れていたので」(すっ)
「ニァニァ」
紫「……」
雛「お、大家さんには内緒にして下さいっ!雨が上がるまでですから!」
紫「……」
雛「あ、いえ、雨が上がっても、この子またいじめられるかもしれませんっ!か、飼い主が見つかるまでっ」
紫「……」
雛「紫暮さん?」
紫「……」(猫ひったくり)
雛「へ?あ、あの、紫暮さん、猫抱っこしたいなら、もっと優しく、え?え?雨降っているのに、なんで窓を開けーー」
紫「……」(ぽいっ)
雛「紫暮さん!?」
紫「……」(窓施錠)
雛「な、ななななっ、何しているんですかっ!こ、ここ、三階ですよ!ね、猫、猫がっ!」
紫「雛、あれは猫じゃない」
雛「へ?犬でしたか?」
紫「犬でもない。むしろ、あんな生物は地球上には存在しない。毛玉に足ついた生物なんか生物と言っていいのかも危うい」
雛「そ、そんな!だ、だって、ニァニァって、鳴いていたんですよっ」
紫「病院に行こう雛。あんな不可解な生物に触って、何か病気を移されたかもしれない。徹底的に検査しよう。そうして、あの生物が入ったこの部屋も引き払い、俺と一緒に住もう。今度は、雨に濡れた本物の猫を見つけるんだよ。猫がいれば、君も部屋から出なくても退屈しないよね」
雛「さりげなく監禁の話になっていませんか!?ーーい、今はあの子の心配を!今から外に」
「ニアァ」
雛&紫「!!」
「ニァニァ」(かりかりかり)
雛「窓を引っ掻いて。な、なんだ、紫暮さん。外に投げ捨てたと思ったのに、ベランダに出しただけなんですねっ」
紫「……」
雛「待っててね、今鍵を開けーー」
紫「……待った」
雛「で、でも、雨に濡れてかわいそうです」
紫「三階から投げ捨てたはずなのに、なんで。無事に降りられても、この短時間で上ってこれるわけが」
雛「紫暮さん?」
紫「雨に濡れているのが嫌なら、見なければいい」(カーテンすしゃあぁ)
雛「そういう問題じゃないですよっ」
「ニァニァ、ニァ……」
雛「ああぁっ、弱ってます!凄く弱った声を出しています!」