うらばなし
「ぐすっ、ぐすっ」
主「泣き声?」
下僕「そのようで。こんな遅くに、迷子でしょうか」
主「……」
下僕「おや、ご主人様。行かれるので?ーーああ、『泣く子は黙らせる』の名言をお持ちのご主人様ですから、早速黙らせに行くのですね。では、この轡をあなた様に」
主「轡常備者は、警察署に行きなさい。あと、こんな時間にうろつく子供も……」
花「うわーん、迷子になったよよよよ!」
主「……」
下僕「ああ、やはり迷ーーごっ!」
主「……」
下僕「ご、ご主人様、な、なぜいきなり、脇腹に右ストレートを?ぐっ、な、なんて理不尽な暴力ーー恐悦至極!ご主人様、もっと!縄と轡は、自分でやりますので!」
主「お前はどんな時でも変態道(我が道)を行くなっ。あ、ああ、あれ、あの女の子、透けてないかっ」
下僕「確かに透けてますね。足もありませんし、ふよふよ浮いて。変わった子ですね」
主「なんで、『変わった子』でまとめられる!」
下僕「足がなければ踏んでもらえない=私めにとって、アウトオブ眼中なのです」
主「両目仕事しろ!うわ、ここよく通るのに、あ、あんなのいるなんて!」
下僕「ご主人様は、幽霊の類が苦手でしたか。ここは、私めにお任せを」
主「初めてお前が頼もしく思えるよ」
下僕「幽霊と言えば、やはり塩。私めの持つこの塩で。ーーご主人様が私めにつけて下さった傷に擦り込み、更にいたぶることが出来るように台所から拝借したこの塩で、退治致しましょう。悪霊退散!」
主「食塩でやられる悪霊がいるかっ!」
下僕「いえ、でも効いているようですよ」
主「へ?」