うらばなし
ーー
カルツ「ミナナー、メリークリスマス。クリスマスの日、恋人たちは一緒にいなければならないらしいから、積雪2メートルでも来ちゃった」
ミナナ「十年に一度の大雪の日に、よく来ましたね。雪だるまみたく真っ白ですよ」
カ「ちょっと待って。外で落としてくる」
ミ「更に雪だるまになるだけですよ、それ。もう開けないで下さい、寒いのが入ってくる」
カ「寒いのが入ってくるだなんて、可愛く聞こえた」
ミ「早く脱いで、体と頭拭いて下さい。玄関先なら濡らしてもいいですから。タオル出します」
カ「替えの服、きちんと置いてあるんだ」
ミ「あなたが私の部屋に住み込もうと置いていった物でしょうに」
カ「捨てられたかと思っていた」
ミ「捨てはしません、引き取って下さい」
カ「……、魔法の薬とか届いていない?」
ミ「……」
カ「ミナナが俺にデレデレになる魔法の薬」
ミ「いえ、届いてなどいませんよ。強いて言えば、大量のワインが部屋にあったぐらいで」
カ「ああ、空瓶が散乱しているのって」
ミ「てっきり、クリスマスだからあなたが置いていったのかと思って飲んだのですが。ーー合点行きました。前に貰ったお酒よりも、このワイン美味しくなかった」
カ「見たこともない銘柄だから、全部安物なんじゃない?俺はミナナに、良いもの飲んでほしいから」
ミ「まったく、はた迷惑な」
カ「ねえ、ミナナ」
ミ「はい?」
カ「服、着たいのだけど。もう、タオルで拭かなくてもいいよ」
ミ「濡れています」
カ「いや、結構ごしごしされたから、痛いぐらいに乾いて」
ミ「びしょびしょです」
カ「ミナナ、酔っている?」
ミ「酔っていません」
カ「……」
ミ「カルツさん」
カ「ん?」
ミ「前々から思っていたのですが、何ですかこの白い肌は。日に当たらないのですか、ならモグラのように少しは黒くなって下さい」
カ「安物の酒で悪酔いしたか……」
ミ「聞いてますか!」
カ(びくっ)
ミ「女として、この肌は悔しい。むしゃくしゃするので、痕をつけます」
カ「ナイフ使う?」
ミ「要りません。あなたから伝授された方法で、痕をつけていきますので」
カ「銃?いやでも、ミナナは元々使えていたし」
ミ「はむ」
カ「!!!!」
ミ「なに、動じているんですか」
カ「噛みつかれると思わなかった」
ミ「かみついていまひぇん、すって、ひるのです」
カ「ミナナが酔いの記憶が残らない人であるのを祈るよ。覚えていたら、明日あたりから口利いてもらえなくなりそう」(ぎゅー)
ミ「これぐらいで、なふなんて、ーーはあ、クリスマスに泣くのはあなたぐらいのものでしょうね。よし、綺麗についた、やった。もう一つ」
カ「笑いながら泣けると教えてくれたのは、ミナナだよ」