うらばなし
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帝「俺は思考した。一見、土産物の剣ホールダーのこの代物だが。マザーも、ダディも、こんな代物を俺の部屋に置いた記憶はないと言う。ここで、二つの説が持ち出せる。一つ、俺の結界を難なく決壊させ、かつ、ヒュプノスの羽を使用し、俺を深淵よりも深い眠りの底に誘う者の可能性。一つ、我が血縁たるため結界内に侵入できる家族をブレインコントロールし、かつ、剣を置かせた記憶を抹消せし者の可能性。
どちらにせよ、この現代社会において失われし神秘術。前世の俺と何かしらの因果を持つ者だ。大々的な問題は、そう、ソレに悪意はあるか否か。
それを知るべき物が、剣に添えてあった『月と太陽が重なり、枯れ果てた大地に水の乙女が現れし時、剣の力解放せん。さすれば汝、約束の時来たれり』という一文。悟ったね。なあ、マルコ。久々に武者震いしちまったよ。ハッ、強がるなよ、マルコ。俺ん中にいんだ、お前の震えも分かっちまう。
ああ、この剣が解放されし時、俺の力も……。強大な力を、この器で保てるのか。ああ、何もせずとも時は来る。せいぜいそれまで、そう、平穏な日常からおさらばするまで、この世界の友と時を過ごすさ」
友『もしもーし、すまんっ。今みんなでカラオケきてっからー、お前の話よく聞けなかったー!』
帝「悪の手先めえええぇ!」
友『えー、だってお前のことも誘おうとしたのに、右腕が疼くとかで行っちまうんだもんよー、あ、ははっ、佐藤アニソンメドレー入れんなってー!』
帝「今すぐお前だけでもそこから離れるんだ!俺の結界内に来い!」
友『いや、抜けんの無理。フリータイム。お前来ればいいじゃん。駅前のカラオケ屋。なあ、前世勇者が来たいだってよー。どうする?あ、おけ?いいってよー。早く来いって』
帝「マルコ、俺を呼ぶ声が聞こえるか?ああ、アイスマンの怒りにより凍えた大地だろうとも、俺は行く!行くとなれば、まず。英雄を産みし聖母から、慈しみの輝きの恩恵を受けねば!」
母「え、なに?小遣い?いいわよー。ついで、夕食も外で食べて来なさい。クリスマスだからってご馳走作らなくてもいいし。お母さんからのクリスマスプレゼントよー」
帝「ふっ、これで何人たりとも我の行く手を阻むことは出来ない!さあ行くぞ、マルコ!戦場にて、勝利の雄叫びを上げよう!」