うらばなし
ーー
【これは、心霊スポットと名高い森林に、肝試しを行った若者たちの映像である】
『おい、こっち来いよ!』
『あんま離れんなって』
『道迷うぞー』
園木「す、凄いですね、この人たち。私なら暗い森の中に入ることもできませんよ」
倉石「……」
(何でこんな怖いとこ行ってんだああぁ!馬鹿じゃないの、馬鹿だろ!わざわざ心霊スポットに行くとか、霊様のテリトリーに入るな。そんなことしなくても、お前の肝は据わっていると俺が認めてあげるから戻れええぇ!)
『なぁ、何か音が聞こえないか』
『鳥か何かだろーー、おい、あれ』
園「ひっ、い、今、映像に!」
倉「……」
(いたああぁ!なんかおったああぁ!白いのが、白くて丸いのが!ハイジのパンとか生優しいものじゃないものがいたああぁ!)
『誰かいる』
『いねえって。懐中電灯でよく照らせ』
『いや、まじで、あれぇ?』
『びびらせーーうわ!』
園「ひっ、く、倉石さん!」(倉の手、ぎゅううぅ)
倉「……」
(出ちゃったああああぁ!なんまいだぶ、なんまいだぶううぅ!)
『やばいやばいやばいって』
『逃げろ、早く、車っ』
『エンジン早く、まずい』
園「あれ、まだ続いて、きゃあ!」(倉の体、ぎゅううぅ)
倉「……」
(続けんなあぁ!映像終われ、終わってくだーーひいいぃ!)
園「く、車まで、ついて」(めそめそ)
倉「……」
(乗っちゃったよ、乗せたくない人乗せちゃったよ。このまま神社にまで行くのか、というか、俺も神社に行きーーん?左腕にあるこの感覚は)
園「倉石さんは、凄いですね。怖くないんですか?」
倉「……」
(天使のトゥーバインが来てるううぅ!え?なんでだ、いつのまに!俺の左腕がヘブンに行っちゃっているんですが、いつの間に天使は迎えに来てくれたので?)
園「私、怖がりで。それなら、こんなテレビ見るなって話なんですけど、ついつい見ちゃって」
倉「……」
(見ちゃって下さい!あなたが見たいと言うのならば、心霊スポットでも冥界でも行く所存!あなたがそこにいるのならば、地獄でもヘブン!生の幽霊がどうしても見たいのならば、俺はそこから飛び降りましょう!)
園「ひっ、今度は病院ですよ!」
倉「……」
(ハッハッハッ、左腕にヘブンを携えた今の俺に怖いものなんて、ぎゃあああ、上から人がああぁ!)