うらばなし


――



「行かないのかい?」


行けないよ。
こんな顔なんか見せられない。


「顔というよりも、感情かね。隠したい感情ながらも、君の頭はそれ一色。嫌悪することではない、むしろ、感情があることは人間として嬉しいことではないか。自己嫌悪は君の得意分野だが、時には感情を剥き出しにしても良かろう。私は、ありのままの君(人間)が好きだ」


余計に隠したくなった。としても、あなたならば見透かすだろう。

「ああ、そうだ、これこそ本当の『愛情』であろうよ?全てを受け入れる。前回も、今回も、そうしてこれからも、『ずうっと憎んでやる』と“微笑む君”でさえ、私は笑って見ていよう」


それが、ひどいもんなんだよ。“笑い事”じゃないのに、“面白おかしくて仕方がない”。許さず、憎み続けることが。……生き甲斐になってしまう。



こんな私では、誰かを嫌いになることがない、ドン引かないあなたにしか顔向けできないよ。


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