【完】私と息子に幸せをくれた人(中篇)
タクシーでスタジオに向かう。
出迎えてくれたスタッフさんに挨拶をしながら、私は零士を抱っこしたまま、共演する春風さんの楽屋の前へと来た。
廊下に居た好子さんに荷物を預け、扉をノックする。
ーートントン
零士がキョトンとしてる。
私はサングラスを外し、零士に握らせながら、「はーい」と返事を聞きながら、扉を開けた。
「失礼します。翔です」
私は本名の菊川翔子から取った、【翔】という名前でモデルをして居る。
下げて居た頭を上げると、春風は呆然としてる。
…あれ…?
私、何か粗相をしたのだろうか。