僕は下僕
カラオケ店の出入り口を出ると


「遅いっ!!」


腕を組み不機嫌な璃子が立っていた。


璃子の鋭い瞳に射抜かれスッカリ縮みあがった。


「ごごごごめん。」


内心、待っててなんて言ってないのに……。と不満を持ちつつ、言えずに謝った。


「先に、帰って良かったのに……。」

「あんた、私に重い荷物を持たせるのっ!?」


璃子はボスっと自分の鞄を僕に投げた。それを慌ててキャッチした。


璃子はそんな僕を一瞥すると「フンッ」と大きい鼻息を立てズンズンと駅に向かった。



「あっ、待ってよー。」


置いて行かれないように慌てて璃子の少し後ろを歩く。



「あのね、さっき東さんに逢ったんだよ♪」


少し前に歩く璃子の後ろ姿に話し掛けた。


璃子はすこしピクリと反応したが「へー。」気のない返事だったが、さっきの興奮が収まらず、一人でペラペラと話し続けた。



「それでね、僕と気付かれなくてねー。」
「ふーん。」
「なんとアドレス聞いちゃったんだー♪」

璃子はピクピクと反応はしたが、やはり興味がないのか気のない返事だった。



「連絡するって、言っちゃったけど何てメールすればいいかなぁ?
こんにちは、!早速メールしました。
みないな?
あーどうしよう!
でもこうやって出逢えたのも運命だよね~♪だからこの神様が与えてくれた運命を逃したくない訳?
分かる?
男ならやっぱ、デートに誘っちゃうとか?
キャー!!
僕に出来るかな?
イヤイヤ、藤澤祐樹!今こそ男になるんだ!!
人生は一度切りだ!!
エイエイオー!!」



一人で盛り上がり拳を高く空に向けた。





< 43 / 54 >

この作品をシェア

pagetop