朱の蝶
兄が残してくれた遺産の全てを
幼い私の手から奪っておいて

高校ぐらい、兄のお金で楽々と
通えたはず・・・

「おばあちゃん、ご飯食べよ」

「いらん、そんなまずいもん」

「そんなわがまま言わんと
 食べてくれな、あたしが
 おばちゃんに怒られるねんで
 ・・・お願いやから」

祖母は、そっぽを向く。

私にとっては、祖母だもの
介護をする事は嫌ではない。

ただ、私が介護をするのが
当たり前の事だというように
向けられる家族の、その視線
が嫌なだけ・・・

介護のストレスで、私の心身
は、もうボロボロだった。

そんなある日、祖母が死んだ
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