朱の蝶
私の口に、お箸で玉子焼き
を運ぶ貴方。

「おいしい?」

「うん、おいしい」

その夜も、その次の夜も

ずっと

ずっと、ずうっと

私達は放れることなく
一緒に深い夜を過ごす・・・

貴方の瞳に映るのは
朝も昼も夜も、女の私・・・

肩肘張らずに、自分らしく
生きる私の姿。

ただひとつ・・・

貴方の瞳に映らない私の瞳
には、涙が溢れる。

背を向けて眠る貴方の隣に
座り、貴方の頭を優しく
撫でながら、瞳は涙に濡れる

そして、その手を胸にあてる

流れ落ちる涙・・・
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