朱の蝶

過ぎる時

弦を仕事に送り出した後
時間があれば、私はいつも
こうして、土を弄る。

「チカちゃん、今日も精が
 出るね、お庭
 見間違えるほど綺麗

 昔を思い出すわ」

「昔・・・?」

「ええ、ユミちゃんが
 生きていた頃は
 今みたいに、こうして
 庭にお花が咲き乱れて
 いたのよ

 セキさん、ゲンちゃんの
 お母さんとユミちゃんが
 庭弄りをしながら話す声
 が、私の家にまでよく
 聞こえてきたもの」

「そうですか」

「チカちゃんも知ってる
 でしょう?
 ユミちゃんの自殺の事・・・
 
 あの後から、セキさんも
 部屋に閉じこもり
 外出はもちろん、庭にも
 出てこなくなってしまって
 ・・・
 本当、あの頃と同じくらい
 ううん、それ以上にきれい
 な、お庭だわ」
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