朱の蝶
『私、死ぬほど嫌な場所から
 何も持たずに、逃げて
 来たんです・・・』

お前が、その可哀想な女なら

お前は、何の為に
この俺に会いに来た。

お前しか見当たらない・・・

みんなは、家族の待つ家へ
と戻って行った。

静まる室内に聞こえる水音

二人は一緒に湯船に浸かる。

「海、好きなのか?」

「うん
 夏になると亡くなった
 両親に連れられて
 よく泳ぎに行ってたの」

「そうか
 泳ぐの得意なのか?」

「普通かな・・・
 ゲンは、海嫌いなの?」
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