朱の蝶
チカ、お前は・・・

「チカ、お前
 知ってるのか?」

緊迫する時の中で何か、気持ち
を整えるようにゆっくりと動く
チカを、俺は見つめる。

俯いたお前の中に何かが宿ると
お前は悲しいまでに強く
凛々しい姿で俺を見つめた。

その瞳を、俺は知っている。

忘れたくても

忘れられない

この俺に付き纏う、視線。

最近、夢の中、ずっと俺の事を
何かを言いたげに見つめ続ける
殺した男の瞳に、そっくりで

息苦しい・・・

「チカ
 お前は、誰だ?」

お前は、失笑したかと思うと
真剣な表情で話しだす。
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