朱の蝶
「・・・
 ほんなら、さいなら」

開かれるドア・・・

「チカ、お前は
 最高の女だった」

弦・・・

最後の最後に伝えたい言葉は
たったそれだけなのか?

閉まるドア・・・

他には
何も言わなくていいのか?

本当に、このまま
行かせていいのか?

いいも、何も、俺の愛した
チカは、どこにもいない。

最初から、いない。

『私、死ぬほど嫌な場所から
 何も持たずに、逃げて
 来たんです・・・』

神前千景など、俺は知らない
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