朱の蝶
黙ったままの一新の鋭い瞳は
全てを見透かすようで怖い。

どうして、何も聞かへんの?

「お酒、飲んでるん?」

机の上に置かれたワイン。

「少しだけ・・・
 
 二代目も、ご一緒に
 一杯どうです
 こちらへ」

いつもの一新と、ちがう。

なんか、怖い。

「私は、ええわ」

「そう言わんと、どうぞ」

「ほんまにええから」

「ええから
 こっちこんかい(来い)」

一新の声色が、変わる。

荒く低い声に、怖いと感じる
私がいた。

震える足・・・
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