朱の蝶
「なんだよ、急に・・・」

「いい人、いるの?」

母の、顔色が曇る。

『ゲンとは、別れてください』

「誰も・・・いない」

「そう・・・」

涙ぐむ、弦の彼女・・・

恋を失った頃の娘、弓に
とても似ていた。

あの表情を忘れられない。

「母さん、顔色が
 気分悪いのか?」

「ええ、少しだけ横になるわ」

そのまま、母は眠ってしまった

「ゲン、もう帰るのか?」

「ああ、また来るわ」

「あの、私も今日は・・・」
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