朱の蝶
なぜなら、彼女の瞳から
零れ落ちる、涙・・・

「泣いたりして
 ごめんなさい・・・」

彼女は、俺に何度も謝り続け
車から降りる事ができない
ようだった。

俺は、何も言えない・・・

ただ、前を見つめるだけの俺

ハンドルに添えた俺の左手に
彼女は、そっと優しく触れる

「セキさん・・・
 あがっていきませんか?」

「ごめん・・・」

「そうですよね
 何言ってるんだろう、私
 
 ごめんなさい」

車を降りようとした彼女の手
に気づくと俺は、触れていた

温かい・・・

この手を放したくない?
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