朱の蝶
組長になったあの日から

スカートなんて

履いてへん・・・

彼女は、一新の大勢いる
女の一人・・・

私を抱いた腕で、アイツ
は、違う女を抱く・・・

女である事を、全身で
楽しんでいる、そんな
着飾った女達を抱く。

色気もない、つまらない女を
抱いた、すぐ後に必ず・・・


聞きたくない声

聞こえる・・・

『チカゲ、お前だけや』


私は、穢れた自分の体を両腕
で抱きしめる・・・

ゆっくりと動き出す、車。

「タスク
 いっつも、ありがとう」

「いえ・・・」

涙が、頬を伝う・・・

一新の声は兄に、とても
似ている。
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