朱の蝶
後部座席に、祐と二人
肩を並べて座る。

運転席、助手席の仲間に
気づかれないように、私は
そっと、祐の手の上に
自分の手を添えた。

重なり合う手・・・

祐は、掌を上に向け
私の手を握る。

あの一夜以来、私達は
抱き合う事はなかった。

毎日、こうして一番近くに
寄りそう私達、抱き合おうと
思えば、いつでも抱き合える

二人きりになる時間を作る事
など容易い。

それなのに、私達はそれを
行わない。

抱き合うことなど

もう、どうでもいい

私と祐の関係は、体ではなく
心で繋がっている。
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