朱の蝶
抱き合わなくても幸せだった

愛し合わなくても愛はあった

「すまない・・・」

俺は、春華を抱きしめる手を
解いた。

「どうして、彼女とは
 別れたんでしょう?
 彼女は、出て行ったはず・・
 
 もう、二度とここへは
 戻らない
 
 そう言ってた・・・」

二度とここへは戻らない
 
そう言ってた・・・

「どうして、君がそれを?
 
 二度と戻らないとチカが
 君に言ったのか?
 それはいつ、いつの話だ」

追い詰める俺の声に、彼女は
驚いていた。

「ごめん・・・でも
 聞かせてくれないか?」

春華は困った表情を浮かべたが
正直に、全てのでき事を、俺に
教えてくれた。
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