朱の蝶
煙草を吸いながら、ぼそっと
呟いた浬の声が徐々に
強さを増す。
 
「最近のお前を見てると
 昔の俺を見てるようで
 正直、胸糞わりぃんだよ
 
 女に捨てられたぐらいで
 シケてんじゃねえぞ
 
 忘れるなら、きっぱり
 忘れろ」

弦は、一瞬だけ口元を
緩ませ、唇を噛み締めた。

その口から、深く低い声が
語りだす。

「カイリ
 じゃあ、お前に聞くが
 愛した女が、過去に自分が
 殺めた男の妹だと知っても

 その女に触れる事・・・
 できるか?
 
 無理だろう?」

弦の暗い表情・・・

吸殻を満杯の灰皿に捨てる浬
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