朱の蝶
私が、彼女にとって重大な
ある事に気が付いてしまった
事に、女は気づいたのだろう

さっきまでのヒステリックな
声が変わる。

お腹を庇う、両腕。

「お願い、この子には
 なんも関係ない

 うちは、あの人の居場所
 なんか知らへん・・・」

「そうか、ほんなら
 仕方ないな

 知ってること、アンタが
 話すまで遣るだけや・・・」

私は、右手に拳を握り締め
彼女のお腹に向かって
その手を前へと突き出す。

「やめて、言うから
 全部言うからやめて」

お腹の手前で止まる手。
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