朱の蝶
いつものように、男(兄)は

弦の夢に現れ

いつものようにせせら笑う

最近の夢の中では、決まって
兄は、じーっと弦を見つめ
続けるらしく

弦にとっては堪らない
苦痛の時間・・・

そして、夢が終わろうとした頃
兄は、決まって言うらしい。

『近づくな・・・』

ところが、今夜の夢は違った。

兄の瞳から、流れ落ちる涙

兄は言う・・・

『チカを頼む』

そして、笑って消えた・・・

弦の、夢の話を聞いて
私の心はスーッと軽くなる。

蟠りが消えてゆく・・・
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