朱の蝶
「弦・・・
 ずっとここに
 おったん?」

「ああ、大丈夫か?」

「うん、もう大丈夫やで

 ちょっと食べ過ぎただけ
 ・・・弦?」

それは、ストレスからくる
胃痛だって事ぐらい俺にも
分かる

上体を起す、千景を俺は
この腕に抱きしめた。

「もう・・・苦しむ、なよ」

鼻をすする音。

「弦、どうしたん?
 何があったん
 泣いてるん?」
 
「泣いてなんかねえよ
 泣くかよ
 情けねえだけ・・・

 お前を苦しめるものから
 お前を守ってやるどころか
 俺は、余計な不安まで
 お前に抱え込ませて・・・

 ごめん、ごめんな」
< 447 / 451 >

この作品をシェア

pagetop