朱の蝶
「謝らんといて
 弦は、何も悪くない

 私が過去に囚われて
 ・・・ごめん」

「こんなんじゃ、お前の
 兄貴に顔向けできねえな
 
 死に際までお前の事を
 気にかけていた兄貴だ
  
 きっと、あの世で
 今のお前を見て、ひどく
 心配してるだろうな・・・」

「お兄ちゃんが私の事を
 気にかけてた・・・?」

「ああ、あの時の事は、よくは
 覚えていないが俺が見る夢
 が本当の事ならば
 息絶える前、お前の兄貴は
 こう呟いた」
 
『帰られへん

 ごめんな』

私の頬を、涙が伝う・・・
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