朱の蝶
「そんなんじゃねえよ
 
 あっちの席、いい?
 
 この子と大事な話が
 あるんだ」

「ああ、何時間でも
 好きに使いな
 
 珈琲でいいか?」

「ああ、お願い
 えっと、君は珈琲でいい?」

「はい」

「マスター
 珈琲、二つお願い」

「はいよ」

店の一番奥の席・・・

「さあ、座って・・・
 まず最初に、名前
 教えてくれる?
 
 変な意味じゃなくて
 その、君の事何て
 呼べばいいか・・・」
 
「私の名前は、カン・・・
 カンノ、チカ、です」

置かれた雑誌の表紙に映る
女優の苗字を借りた。
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