朱の蝶
「チカちゃん
 初めまして、俺は・・・」

私は、息を呑む・・・

「・・・セキガミゲン」

やっぱり、貴方が兄の敵・・・

「それで、落ち着いた?」

「さっきは、すみません
 困っていたところ声を
 掛けて頂いて・・・」

「何、困ってたの?」

「私、死ぬほど嫌な場所から
 何も持たずに、逃げて
 来たんです・・・

 雁字搦めに縛られて
 窮屈で、本当の私で
 居られない場所から・・・

 気がつけばこの場所に・・・
 
 誰も頼る人のいない右も左も
 分からない、この街で暮らす
 ことが、私にできるのかな
 そう思ったら・・・
 
 急に怖くなって」
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