朱の蝶
「独りは、死ぬほど
 怖いから・・・

 でも、あの場所には
 戻りたくない

 あの場所に戻っても
 
 私は、独りきり・・・」

零れ落ちる涙に、彼女の辛さ
を感じた弦。

「ここに居ればいいさ
 
 居たいだけ居ればいい

 この街は、どんな人間でも
 優しく受け入れてくれる
 
 俺のような・・・人間でも

 何にも無いところだけど
 自然の空気を吸えば
 元気になれるさ

 そして、元気になって
 ここに飽きたなら
 出て行けばいい

 ただ、それだけだ・・・」

「元気になる・・・
 
 私は、この街で 
 元気になれますか?」

「ああ、なれる」
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