朱の蝶
俺を待つ人の元に、こうして
戻り、ぬくぬくと残りの人生
を送る。

どこか遠く見ず知らずの街に
帰らない男を待ち続ける人が
いる・・・

俺の傷と同じ傷を

俺は、誰かに刻み込んだ。

お前に・・・

「ママ」

「マオ、いい子にしてた」

「うん」

俺の瞳には、大切なものが
映る。

「おかえり、二人とも
 出稼ぎ、ご苦労さま」

「ただいま」

「・・・出稼ぎって言い方が
 引っかかるのは私だけ?」

同じ時を駆け抜けた、大切な
仲間の嫁さんと、子供達に
囲まれながら俺は今、幸せ
を感じる。

俺には不釣合いな、幸福・・
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