朱の蝶
『ヒック、ヒック』

静寂の夜に、微かに聞こえる
妹の泣き声、鼻を啜る音

一人で、泣くなよ・・・

「何があった?
 ・・・・・・
 困った事があるなら、俺に
 話してみろよ
 
 俺が助けてやるから」

俺、何、言ってる?

「ほん、とう・・・
 
 助けてくれる?」

短い髪、男のようにパリッと
スーツを着こなした女の瞳は
涙を浮かべ、俺を見つめる。

澄んだ綺麗な瞳に、俺が映る

「あっ、ああ
 
 俺に任せろ・・・」

自分が吐いた言葉に驚く
俺がいた。
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