お嬢様が貧乏学生と2人ぼっち
元から雨は嫌いだった。
そういや梅雨の時期だったか。
一人で頑張るって決めたのは、梅雨の時期だったか。
そう思えば余計に雨は嫌いだな。
「言わなくてもいいかも知れないけど。あ、気分悪くしないでね…私は雨が好き。」
俺は返事をしなかった。そのかわりに瞬きを余分に5回ぐらいした。
「お父様がね、今日は雨だから出掛けてはいけないよって言いに来るの。」
「一緒に遊んでくれるわけじゃないんですね。」
ちょっと皮肉っぽく言ってみたら、琴未さんは微笑んだ。
珍しいな。怒らないんだ、今は。
「私は嬉しいのよ十分。直接、会いに来て何か言われるのって雨の日だけだったから。」
「つまり俺らは、寂しい人間だってことですね。」
「間違いないわ。」