15のチルドレン -Secret End-
「遠藤。なんか顔が百面相になってるぞ。どうしたんだよ。仕事でヤなことでもあったのか?」
俺のしかめっ面に気付いた坂本が割り箸を置きながら顔を覗き込んでくる。
「バツイチの憂鬱だ」素っ気無く返すと、「相手見つければいいじゃん」当たり前のように返してきてくれる。
そりゃそうなんだが、簡単に相手が見つかると思うなよ、少年。
これでも結婚した身の上だから経験者として言えるけど、恋愛から結婚までの距離を完走するには相当の労力がいるんだ。
これからまた一から恋愛して生涯パートナーを探す、なーんて体力と根性は今の俺にねぇよ。
「29のクセに枯れた発言だな、もっと頑張れって。まだまだ若いぞ、遠藤」
俺の愚痴を聞いた坂本は能天気な笑声を漏らして、電子レンジから惣菜の入った皿を取り出す。
「白飯は?」
「後で」
簡単な言葉を済ませりゃ、坂本は台所の電気を消して皿をテーブルに置いた。
んで、向かい側に座るとさっさ小皿に惣菜をよそっていく。
自分の分と俺の分を取り分けていく親友の動作を流し目にしつつ、俺は缶ビールの蓋を開けた。
やっぱ不思議だよな、親友が15のままって。
俺は今年でアラサー。
まあ二月生まれだから来年アラサーになるわけだけど、歳的にはアラサーなわけで。
旧友の秋本も当然アラサーなわけで。
同年の親友もアラサーになっとかないとおかしいのに、俺の年齢の半分だぜ?
そりゃあ不思議も不思議だろ。
親友にそれを言えば困るだけだろうけど。
「なあ、遠藤の奥さんだった人って何処で知り合ったんだ?」
と、坂本が話題を振ってくる。
「お前それ」傷心を抉る質問だな、俺は引き攣り笑い。
あんま奥さんとの思い出は語りたくも思い出したくもないんだけど。
「別れた理由は聞かないって」
見当違いの言葉が飛んできた。
そういう問題じゃないっつーの。